揚げる前に

天ぷらは高温の油で衣を揚げ、素材に火を入れていく食べ物です。従って、揚げ始めると常に熱が入り続けるため揚げ鍋に集中する必要があります。可能な限り下準備、モノの配置・材料の下ごしらえ・打ち粉や衣の下ごしらえを行わなければなりません。これについて考えていこうと思います。

 

モノの配置

私は天ぷら近藤のYou Tube動画を見て天ぷらにハマりました。しかし、どの動画を見てもどの店に行っても揚場のモノの配置は概ね変わりません。近藤文夫の「天ぷらの全仕事」にも揚場の配置が記載してありますがほぼどの店も変わりません。

具体的には揚げる人から見て最左翼が材料、そこから右に打ち粉、衣、揚げ鍋です。左から右に手の動線が流れるように工夫されています。また天ぷら自体がテニスで言うフォアハンドで投入することはなく、バックハンドで投入することも関連してくるでしょう。フォアハンドだと言わば押す動作、バックハンドは言わば引く動作です。刺し身を切りつけるときも刺身包丁を一回で引ききってネタを作ります。引く動作は押す動作に比べて余計な力が入らず操作ができるのではないでしょうか。

 

材料の下ごしらえ

材料の下ごしらえは材料によって異なります。断面が空気に触れることによって変色する天種、乾燥しすぎると旨さがなくなる天種、足の早い天種などがあり、それぞれについて可能な範囲で下準備する他ありません。提供時間に制限がないのが家庭天ぷらの良いところです。また、一回に揚げる種類を限定することで下ごしらえの手間を減らすことができます。ここは家庭の強みが生きてくるかもしれません。

 

衣、打ち粉の下ごしらえ

衣、打ち粉は如何に粒子を細かく、如何に空気を含ませるかに職人たちは腐心しているようです。自分で揚げていても篩にかけない打ち粉、衣は何だかフリッターのように揚がってしまいます。炭酸水を使って卵水を作ってみても君が気泡と共に湧き上がってきて結局フワッとした揚げ上がりにはなりませんでした。

冷蔵庫で蓋を開けておき小麦粉を乾燥させる、液体窒素をかける、高い位置から篩にかける、など多くの手法があるようで今後も検討を続けていかなければならない部分です。

 

衣についても水を弱酸性にする、中世にする、天種に応じて濃度をかえるなど工夫の余地があります。皮がついていて滑りやすいもの、衣のつきぐあいにムラが出来てしまうもの、あまり火を入れたくないもの、焦げてしまうが火は入れたいもの、などの用途に応じて使い分けねばなりません。一つのボウルに3箇所違う濃度を作る手法が「天ぷらの全仕事」には乗っていましたが実際はかなり大きなボウルが必要になり家庭では不向きです。ここはYou Tube「天ぷら元吉の天ぷら教室」にあったボウルの表面に小麦粉をかけてそこで濃度調整を行うという手法が適していると考えられます。

薄めないし中間の衣を作っておき必要に応じて小麦粉を追加し表面上で衣を天種につけるのです。そうすると数回ごとに衣の調整ができて便利です。

 

今回は下ごしらえについて記しました。まだまだ準備段階ですがここまででもこれだけ検討事項があるのです。

天ぷらは深遠なのです。

 

 

参考資料)

天ぷらの全仕事 近藤文夫著

You Tube「天ぷら元吉の天ぷら教室」