天ぷらとは何か

そもそも天ぷらとは何か。天種に、卵水と小麦粉を混ぜて作った衣をつけ、高温の油で揚げたものであるがそのルーツはなんだろうか。大体教科書の初めの方に歴史など書いてあるので私も少し調べてみた。興味が有ればその歴史をたどるのって楽しいですね。

1540年頃のポルトガル人による鉄砲伝来とともにその原型がもたらされます。キリスト教では、四季に行う斎日で祈祷と断食を行い、その間肉食を禁じ、代わりに野菜や魚に小麦粉で衣をつけて揚げた料理を食べていたそうです。

その斎日をポルトガル語では「テンポーラ」とよび語源となったのではないかと言われています。語源に関しては他にもイタリア語、スペイン語で斎日という意味の「テンポラス」や日本語であぶらの当て字の「天麩羅」が読み方が変わりてんぷらになった、など諸説あります。


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dancyu ホームページより引用 ポルトガル風天ぷら いわゆるフリッターに近い

 

 

当時油自体が日本人にとって貴重品であり、一般庶民が口にすることは難しかったことから外国からのルーツであることに異を唱える情報は見られませんでした。

同時期に長崎では郷土料理の卓袱料理として「長崎てんぷら」が発達していきました。これは衣に水を使わず酒や砂糖なども使用して衣にも味をつけてラードで揚げる料理でフリッターに近い性状になるそうです。


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長崎てんぷら 霧島酒造ホームページより引用

 

 

これが1600年代に関西へ進出し植物油などで揚げる「つけ揚げ」となり、江戸幕府開幕に伴い江戸へ「てんぷら」として進出していったようです。
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「さつま揚げ」が関西で発展した天ぷら

「つけ揚げ」が関東から逆輸入された天ぷらのよう。

 

 

江戸での天ぷらの評価は自己紹介にも記した通り魚介類をごま油で揚げることで臭みを消し賞味期限を長引かせるためのもので保存食でした。「ゴマ揚」と呼ばれていたそうです。

当時は屋台料理隆盛の時代で寿司、鰻と並んで江戸の3大名物に数えられていたそうです。ファーストフードとしての側面もあり、当時は立ち食いできるよう揚げたものを串に刺して提供していました。


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鍬形恵斎「近世職人尽絵巻」

 

 

次第に油が安定供給されるようになり江戸末期、明治時代には現代の料亭や専門店のような固定店舗で天ぷらを提供する店が出現してきます。これらの店が関東大震災で被害を受け職人が各地に散り全国へ普及していったのが天ぷらの歴史のようです。

現代の江戸前天ぷらは薄衣でさっぱり頂くのが定石になっていますが、保存期間を伸ばすというコンセプトがあった以上何処かで転換点があったと考えざるを得ません。料亭や専門店が出てきたあたりで従来の保存食的な天ぷらと薄衣の天ぷらの競合が起こり、薄衣が残ってきたのだと私は考えています。

また天ぷらに関する逸話としてその後沖縄でモービル天ぷらなるものが出現します。戦後沖縄で物資不足に悩まされる中生まれた機械潤滑油を用いて揚げる天ぷらのことで、当時は重宝されたとのことです。しかし機械油が消化に良いわけもなく、食後は下痢や腹痛に悩まされ死者も出たと言われております。食料に関する知識普及、教育の重要性もさることながら、天ぷらがそれだけ魅力的な食品であることを物語っている逸話ではないでしょうか。


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価格ドットコムより引用

揚げている画像は見当たりませんでした。

しかし、これで料理しようというのは逞しいですね。

 

 

和食が世界文化遺産に登録された現在、天ぷらはまだまだ世界に発展し続けるポテンシャルを秘めています。江戸前の魚介類の漁獲量が減り寿司ネタやうなぎは供給が困難になることが予想されます。天ぷらも穴子やキスが食べられなくなるかもしれません。しかし、天ぷらには野菜があります。例えばアスパラガスなどはメキシコ産でも太くてよいものがたくさん日本に入りスーパーにも並んでおり、国産にこだわる必要がありません。


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キッコーマンホームページより

野菜の天ぷらは精進揚げともいう。

 

寿司で言うカリフォルニアロールのように世界に溶け込む文化として今後の発展を期待せずにはいられません。日本に残された数少ない武器として活用され発展し世界を席巻していくことでしょう。

 

参考資料)

昭和産業株式会社ホームページ

ウィキペディア

香水亭ホームページ 天ぷらの歴史

日本文化研究ブログ

キッコーマンホームページ

価格ドットコムホームページ